
黒の顔料というと日頃は輪郭線など地味な役割だ。
ところがこの墨彩という黒を基調にした表現方法をとると俄然存在感を増してくる。
朱色と金彩の取合せが古来もっとも相性がいい。
高貴で優雅な器の繊細なフォルムにとても似合う。
これがぼってりした厚手の器に描くと重厚感が強くてブラックホールのように周囲の空気を吸い込んで制圧する。薄明かりの中漆器との相性などとてもよいし、ビクトリア調のものともとてもよく合う。
余談だが拡大画像で本金の筆使いを観察して欲しい。
西洋ペインターの筆使いでは粘って重すぎて引けない生き生きした長い線を
いとも簡単に一気呵成、躍動的に引いている。筆は普通の小筆。
やはり紙と毛筆、書の発祥地。毛筆の使い方には西洋にはない伝統と技の奥行がある。
金彩絵付けの心得があれば西洋ペインターでも簡単に引けるのと思って説明したが
先入観が強すぎて説明が耳に入ってゆかず、加えて書の知識がなさすぎてダメだった。
残念なことだ。同じことは大学で日本画を専攻している学生さんと話した時もそうだった。
覚三や横山など文化罪人のせいで線に対する無知と先入観が日本のインテリに染み付いている。残念。
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