先日ご紹介したものを更に詳しく掲載いたします。
磁土から轆轤形成用の古典的なものを採用しています。
流動性の高い景徳鎮磁土の変形を防ぐための素焼きせず景徳鎮本来の
生地に直接絵付け後釉薬を掛けて焼く「生掛け釉薬」の発色と肌合いの味わいを求めています。
よって「吹き釉」の味わいも最大限生かされています。
景徳鎮磁土と伝統工法上西洋式のプレス製品の様な文字通りの型で押したような端正さは無くなりますが、多少の歪みこそがゆらぎとして優しく日常、手肌に馴染んでゆくことでしょう。
むしろ手作業で寸法だけ見てもこれだけの規格のものを焼き上げると言うことは大変素晴らしいことです。
たとえれば景徳鎮の伝統工法の磁器はロールスロイスの様なものです。
日本車の様なかっちりした合理的規格と出来栄えではありませんが
手作業ならではの職人の知恵と経験が生み出した気品と柔和さが横溢しています。あらゆる心地よさはここから生まれます。経済的合理性だけ追求しては生まれません。
確かに大量に安定して流通させ、利益を上げて行くには伝統工法はむらが多すぎて不適応です。しかし少量でも、規格が一定でなくても本来ものの善し悪しとは別の問題のはずです。
この度は普通の山水なら数点描ける時間を費やして職人のトップが一点の絵付けを完成させております。それとても、生掛け焼成での不安定さで失敗する確率が高いのです。
しかしそれでも敢えてお客様方には伝統的な優良な製品を細々とでもご紹介いたしたいと考えております。
少量で優良な景徳鎮磁器を仕入れたいと思われる業者の方にもお勧めのシリーズです。




まず当初大体のデザインは華洋折衷の青花金魚シリーズだけで行く予定でしたが、景徳鎮人が「パターン図案絵付け」と「絵画絵付け」をあまりに厳格に分け考えており、花のパターンと方向性ある金魚を折衷すると言う概念をなかなか理解できずに私のデザインを飲み込んでもらえませんでした。討論するなかで生まれた別のシリーズがこれです。
「中国絵画絵付け」で意境とモチーフのベクトルと平衡感覚が強調されています。書やてん刻と同じ次元です。
絵付けでまず直面した問題は水蓮の葉の描き方です。
こう言った規則正しそうでいて不規則なものの重ねを
平板にならないように描くのがなかなかと難しいのです。
うっかりリズムを間違ったり筆運びの方向を間違うと
全体が死んでしまいます。
既に描いたところにつられないよう一葉、一葉矛盾なく重ねて描くだけでも大変なところ、今度は染めを均等に施さなくてはなりません。
一枚の葉の中でどれだけ濃淡を出すかと言うこともだいぶ工夫を要しました。結局、小魚が泳ぐ白い空間と小魚の動きを際立たせるため、やや平板な感じに全体を仕上げ「青対白」の対比を主眼としました。それでも微妙な濃淡による優しい揺らぎは感じられます。
そしてこの青い葉の波に挟まれた白い水の面積を調整することで描いた小魚の動きがより躍動的に映り方向性とか速度感が表現として出しやすくなりました。
しかし何と言っても画師の腕です。この小魚の動きと小魚の周囲の淡い青のぼかしの波紋をご覧ください。
カップをぐるりと回すとあたかも夏空を映す水面を魚がツンとつつきながら遊泳する様を目の前に見るようです。
この魚の動きにはさすがに参りました。
指示した以上の出来栄えです。
寶田
続く
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